障害者権利条約って何?批准って何?【現役福祉関係者がわかりやすく解説します】

障害者権利条約という言葉を聞いたことはありますか?

福祉関係のお仕事や学校などで関わっていないと、聞きなれない条約かもしれません。

 

今回は、福祉関連の研修や施策等の事務に、10年携わっているYosshyが、

障害者権利条約のポイントを解説します。



 

 

障害者権利条約って何だろう

正式な名称は、「障害者の権利に関する条約」といいます。

条約の第一条「目的」には、以下のように記載されています。

この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。

「条約」とは、国際的な約束です。

障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由を守るための約束であり、障害者の権利を実現するために国がすべきことを決めています。

障害者権利条約は、障害者がもともと持っている自分らしさを大事にしています。

 

例えば、障害者権利条約では、障害に基づくあらゆる差別(合理的配慮の否定を含む。)を禁止しています。昨年、車いすユーザーが飛行機に搭乗させてもらえなかった差別事例などは、条約に照らすとあってはならないこととなります。

 

ちょこっと解説:合理的配慮って??

障害のある人から、「車いすのため、通勤ラッシュの時間帯を避けて出勤したい」と申し出があった場合、時差出勤を認めるケースは、合理的配慮といいます。

読み書きに難しい子から、教室で一緒に「勉強をしたい」と学校に申し出があった場合、「拡大教科書やタブレット、音声読み上げソフトを利用して勉強できるようにする」、このケースも合理的配慮といいます。

ちなみに、申し出がなくても、事前に時差出勤ができるようにしたり、タブレット等を用意したりすることは、「環境整備」として、言葉の整理がされています。

つまり、合理的配慮とは、障害のある人からの障害特性や困りごとに対する「○○して欲しい」という申し出に対して行われる配慮のことを言います。

 

2016年4月に施行された「障害者差別解消法 (正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」により、この合理的配慮を可能な限り提供することが、行政・学校は義務、民間事業者(企業等)は努力義務と定められました。

 

障害者権利条約を批准するまで

障害者権利条約は、2006年12月13日に国際連合総会にて採択されました。(2005年5月3日発行)

日本では、2007年9月28日に署名し、2008年 5月3日に発効されました。

その後、日本国内の障害のある人などから、条約の締結に先立ち国内法の整備を始めとする障害者に関する制度改革を進めるべきとの意見が寄せられたため、3つの国内法の整備のが進められました。

整備された国内法

 2011年8月 障害者基本法が改正

 2012年6月 障害者総合支援法が成立

 2013年6月 障害者差別解消法が成立、障害者雇用促進法が成立

 

国内法の整備を整えた日本は、2013年12月4日に国内で条約の批准を承認し、2014年1月20日に批准書を国際連合事務総長に寄託しました。

そして、国連採択から7年後の2014年2月19にようやく、日本国内で効力が発生したのです。

批准(ひじゅん):条約を正式に承認・許可することを言いいます。日本では国会承認が必要となります。

国会で承認した(批准)した以上は、条約に日本社会を近づけていく必要があります。

 

 

障害者権利条約にはどんな内容が書かれているの?

障害とらえ方

条約批准までの「障害」のとらえ方は、障害は病気や外傷等から生じる個人の問題であり、医療を必要とするものであるという、いわゆる「医学モデル」の考え方を反映したものでした。

条約では、障害は主に社会によって作られた障害者の社会への統合の問題であるという、いわゆる「社会/人権モデル」の考え方が反映されています。

例えば、足に障害がある人が建物を利用しづらい場合、足に障害があることが原因ではなく(医学モデル)、段差がある、エレベーターがないといった建物の状況に原因(社会的障壁)がある(社会/人権モデル)という考え方になります。

 

目的

「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」です。

障害のありなしに関わらず、ありのままの状態のまま、すべてのことが平等になることを目的としています。

 

“Nothing About Us Without Us”

“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)の考え方を背景として、障害当事者の声を重視するということが書かれています。

 

施設・サービス等の利用の容易さ

全ての障害者が、飛行機や新幹線、電車、バスなどの交通(輸送)機関、あるいは情報通信等の施設・サービスを利用できるように、しっかりと対応しましょうということが書かれています。

 

自立した生活・地域社会への包容

全ての障害者が、誰と、どこ(地域)で、どんな家で暮らしていくか、他の人と同じように選択の機会が認められ、社会生活に参加することができるようにしましょうと書かれています。

 

教育

全ての障害者が、平等に教育を受ける権利があことり、あらゆる段階の教育制度や生涯学習を確保しましょうと書かれています。また、その権利のため、障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと、必要な「合理的配慮」が提供されること等が定められています

 

雇用

障害者が、障害のない人と平等に労働に関する権利を有することを認めていきましょうと書かれています。特に、雇用における障害に基づく差別の禁止や、職場での障害者に対する「合理的配慮」の確保をしていきましょうと書かれています。

 

キーワードは、Social Inclusion(ソーシャルインクルージョン)

障害があっても社会から排除するのではなく、社会の中で共に助け合って生きていくことであります。

お互いの違いを認め合い、支え合い、困っている人がいたら、声かけやヘルプをすることで、十分に目の前の障害(障壁)は乗り越えることができると思います。

 

まとめ

ここまで、障害者権利条約についてご紹介してきましたが、この条約の最も大きな課題は、『国民に知られていない』ことです。

内閣府の調査では、「条約の内容も含めて知っている」と答えた者の割合が3.4%、「内容は知らないが、条約ができたことは聞いたことがある」と答えた者の割合が17.9%、「知らない」と答えた者の割合が77.9%でありました。

そうなんです。国民の7割以上がこの条約のことを知らないのです。

このような状況で、障害者検条約を批准しているといえるのか。

今後、国連の障害者権利委員会からのチェックが行われたり、オリンピックを契機に障害福祉が前進する方向ではありますが、

筆者も福祉に携わるものとして、多くの方に「知ってもらえる」ように発信していきたいと考えます。

ぜひ、こちらの記事「深川友貴さんのFukatomoインクルーシブlab.を徹底解剖!」もご一読ください。

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