日本の人口、約1億2,000万人のうち、障害のある方は、963万人いらっしゃいます。
複数の障害がある人もいますので、単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.6%が何らかの障害があるということになります。
障害のある方に関する法律は、障害者基本法をはじめ、障害者雇用促進法、障害者差別解消法など、
いろいろな視点でたくさん整備されています。
平成25年4月に施行された障害者総合支援法は、障害のある人への支援を定めた法律であり、
障害のある人一人ひとりのニーズ(希望)にあわせて、いろいろな障害福祉サービスが利用できるよう、仕組みを定めています。
本記事では、障害福祉サービスの内容を中心に説明します。
障害者総合支援法のワンポイント紹介
障害者総合支援法は、障害のある人への支援を定めた法律で、
正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といいます。
長い法律名…
でも、簡単です。
この法律は、障害のある人の日常生活と、社会のなかで生活するために、
自宅で受けるサービス、
通って受けるサービス、
住んで支援を受けるサービス、
困りごとを相談できるサービスなど、
いろいろなサービスを定めています。
この法律により、障害のある人は、必要な支援の度合い(「障害支援区分」といいます)を測り、
その度合いに応じたサービスが利用できるようになりました。
障害者総合支援法の基本理念
- 全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること
- 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現すること
- 全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられること
- 社会参加の機会が確保されること
- どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
- 障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資すること
対象となる人ってどんな人??
- 身体障害者のうち18歳以上の人
- 知的障害者のうち18歳以上の人
- 精神障害者のうち18歳以上の人(発達障害のある人を含む)
- 難病のある18歳以上の人
知的:知的障害者福祉法
精神:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定
難病:治療方法が確立していない疾患その他の特殊の疾患で政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度
難病のある18歳以上の人も対象です。
これまで難病のある人は制度の谷間に置かれ、必要な支援を受けることができない状況がありましたが、この法律が難病のある人も対象に含めたことにより、難病のある人で法律が定める条件を満たす人は身体障害者手帳の有無にかかわらず、必要なサービスを利用できるようになりました。
障害者総合支援法が対象疾病は、2020年7月現在、361疾患が指定されています。
「自立支援給付」とは受けられるサービス
この法律による福祉サービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つに大きく分けられます。
「個別に給付」=「一人ひとりにサービスが提供される」ことです。
自立支援給付のメニューは、5つに分かれます。
介護給付/訓練等給付/相談支援/自立支援医療/補装具
1つひとつ解説しましょう。
介護給付
居宅介護(ホームヘルプ)児 者
自宅で、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。
重度訪問介護 者
重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により、行動上著しい困難を有する人で常に介護を必要とする人に、自宅で、入浴、排せつ、食事の介護、外出時における移動支援などを総合的に行います。2018(平成30)年4月より、入院時も一定の支援が可能となりました。
同行援護 児 者
視覚障害により、移動に著しい困難を有する人に、移動に必要な情報の提供(代筆・代読を含む)、移動の援護等の外出支援を行います。
行動援護 児 者
自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援や外出支援を行います。
重度障害者等包括支援 児 者
介護の必要性がとても高い人に、居宅介護等複数のサービスを包括的に行います。
短期入所(ショートステイ) 児 者
自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、夜間も含め施設で、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。
療養介護 者
医療と常時介護を必要とする人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護及び日常生活の支援を行います。
生活介護 者
常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動又は生産活動の機会を提供します。
障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援)者
施設に入所する人に、夜間や休日、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。
訓練等給付
自立訓練 者
自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練を行います。機能訓練と生活訓練があります。
就労移行支援 者
一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
就労継続支援(A型=雇用型、B型=非雇用型) 者
一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型があります。
就労定着支援 者
一般就労に移行した人に、就労に伴う生活面の課題に対応するための支援を行います。
自立生活援助 者
一人暮らしに必要な理解力・生活力等を補うため、定期的な居宅訪問や随時の対応により日常生活における課題を把握し、必要な支援を行います。
共同生活援助(グループホーム) 者
共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。また、入浴、排せつ、食事の介護等の必要性が認定されている方には介護サービスも提供します。さらに、グループホームを退居し、一般住宅等への移行を目指す人のためにサテライト型住居があります。
《Point》
※自立生活援助と就労定着支援は、2018年の法改正により新設されました。 New Service‼
※サービスには期限のあるものと、期限のないものがありますが、有期限であっても、必要に応じて支給決定の更新(延長)は一定程度、可能となります。
自立支援医療
障害の状態を軽減するための医療を受けたとき、医療費の自己負担額を軽減する制度です。
身体障害のある人が対象の「更生医療」、
障害のある子どもが対象の「育成医療」、
精神障害のある人が対象の「精神通院医療」の3種類があります。
補装具
体に障害のある人が装着することで体の機能を補完する「補装具」の購入や、修理にかかる費用の自己負担額を軽減する制度です。2018年よりレンタル(貸与)制度も創設されました。
5.相談支援
「計画相談支援」「地域相談支援」「基本相談支援」の3種類があります。
計画相談支援
●サービス利用支援
障害福祉サービス等の申請に係る支給決定前に、サービス等利用計画案を作成し、
支給決定後に、サービス事業者等との連絡調整等を行うとともに、
サービス等利用計画の作成を行います。
●継続サービス利用支援
支給決定されたサービス等の利用状況の検証(モニタリング)を行い、
サービス事業者等との連絡調整などを行います。
地域相談支援
●地域移行支援
障害者支援施設、精神科病院、保護施設、矯正施設等を退所する障害者と
児童福祉施設を利用する18歳以上の者を対象に、
地域移行支援計画の作成、相談による不安解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整等を行います。
●地域定着支援
居宅において単身で生活している障害者等を対象に常時の連絡体制を確保し、緊急時には必要な支援を行います。
障害児相談支援(児童福祉法)
●障害児支援利用援助
障害児通所支援の申請に係る支給決定前に、障害児支援利用計画案を作成し、
支給決定後に、サービス事業者等との連絡調整等を行うとともに、
障害児支援利用計画の作成を行います。
●継続障害児支援利用援助
支給決定されたサービス等の利用状況の検証(モニタリング)を行い、
サービス事業者等との連絡調整などを行います。
《Point》
- 障害のある子どもの居宅サービスについては、指定特定相談支援事業者がサービス利用支援・継続サービス利用支援を行います。
- 障害のある子どもの入所サービスについては、児童相談所が専門的な判断を行うため、障害児相談支援の対象とはなりません。障害者総合支援法による地域生活支援事業
まとめ
障害者総合支援法は、障害のある人が住み慣れた地域で生活していくために必要となる福祉サービスを定めた法律です。
障害のある人自らが、個々のニーズに応じて利用するサービスを組み合わせて選び、契約して利用する仕組みになっています。
さまざまな状況に対応するために多くの種類のサービスが用意されている反面、仕組みが複雑でわかりにくいと感じる人もいるかもしれません。
このようなときは、まずは、市区町村の障害福祉窓口に相談し、自分に適したサービスを見つけてください。