虐待による死亡事例は、年間50件を超え、1週間に1人の子どもが命を落としています。
また、子ども達の養育の支援を行う児童相談所が対応した児童虐待の件数は、約16万件です。
これが日本の平成29年度の状況です。
本記事では、「子どもの虐待」について、紹介します。
「虐待」という言葉
世界では、「child abuse-チャイルド・アビューズ」という言葉が使われています。
一方、日本では「子ども虐待」と訳され、使われています。
個人的な見解ですが、子育てに疲れ、苦悩し、現状を解決することが出来ず、相談する人も見つからず、わが子に手を挙げてしまうような保護者を考えますと、正直、「虐待」はきつい感じを受ける言葉です。
「子どもの濫用」とも直訳することが出来たため、もう少し、柔らかな表現にできなかったのかと疑問に思うところです。
専門家たちの間では、「不適切な関わり」(maltreatment-マルトリートメント)という言葉の方が、良いとの考え方もありますが、現状では、なかなかよい言葉が見つかりません。
「虐待」という言葉が、一生懸命に育児してきた日頃の努力を、すべて否定されたと保護者が感じてしまうことを危惧します。
その一方で、絶対に許されるものではない「子どもへの虐待」があることも事実であります。
子どもの権利条約に照らしても、「生きる」「育つ」「守られる」権利は、すべての子どもに等しくあるものですので、たとえ保護者であっても侵害してはいけないと考えます。
子ども虐待とは?
「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「ネグレクト」が、虐待の種類として、厚生労働省が分類をしています。
しかし、実際に起こった虐待事例をみますと、この四種類の子ども虐待は、それぞれ単独で発生することもありますが、暴力と暴言や脅し、性的暴行と暴力や脅し、などが、複雑に絡まりあって起こる場合もあります。むしろそのようなケースの方が多いと考えます。
身体的虐待
保護者が子どもに、殴る、蹴る、水風呂や熱湯の風呂に沈める、カッターなどで切る、アイロンを押しつける、首を絞める、やけどをさせる、ベランダに逆さづりにする、異物を飲み込ませる、厳冬期などに戸外に閉め出す、などの暴行をすることを指します。
上記は、過去に実際にあった事例です。
身体的虐待を受けた子どもは、打撲や骨折、頭部の外傷、火傷、切り傷などを負い、死に至ることもあります。
周囲から分かりやすく、顕在化しやすいのですが、洋服の下の見えない部分にだけ暴行を加える場合もあり、発見が遅れることもあります。
性的虐待
子どもへの性交や、性的な行為の強要・教唆、子どもに性器や性交を見せる、などが上げられます。
性的虐待は、本人が告白するか、家族が気づかないとなかなか顕在化しません。
実父や義父などから、「お母さんに話したら殺すぞ」などと暴力や脅しで口止めをされているケースも少なくなく、子どもの年齢によっては性的虐待だと理解できないこともあります。
また、実母や義母などの女性から男の子どもに対しても¥の性的虐待も確認されています。
心理的虐待
大声や脅しなどで恐怖を与える、子どもの話を無視したり、拒否的な態度をとる、きょうだい間差別をする、自尊心を傷つける言葉を繰り返し使って傷つける、子どもがDV(ドメスティック・バイオレンス)を目撃する、などを指します。
子どもの心を死なせてしまうような虐待と言えます。
ネグレクト
養育の放棄・拒否などと訳されています。
保護者が、子どもを家に残して外出したり、食事を与えなかったり、衣服を着替えさせなかったり、登校禁止にして家に閉じこめたり、無視して子どもの情緒的な欲求に応えなかったり、遺棄するなどを指します。
育児知識が不足していてミルクの量が不適切だったり、パチンコに熱中して子どもを自動車内に放置することなども含まれます。病気なのに病院に連れて行かない、医療ネグレクトも存在します。
乳幼児や年齢の低い子どもに起こりやすく、子どもが死に至るケースもあります。
虐待としつけの違いが難しい
「児童虐待の防止等に関する法律」により、子ども虐待の定義は、「身体的虐待」、「性的虐待」、「ネグレクト」、「心理的虐待」の4つに分類され、定義付けされました。
しかし、この定義が明らかになっても、「虐待」と「しつけ」の違いに関しては明確になっていません。
「虐待」と「しつけ」には、しっかりと線引きできないグレイゾーンが存在しています。
多数の事例に関わってきた福祉、保健関係者や精神科医、小児科医などが言うように、
「子どもが耐え難い苦痛を感じることであれば、それは虐待である」と考えるべきだと思います。
保護者が子どものためだと思っていても、過剰な教育や厳しいしつけによって、子どもの心や体の発達が阻害される状況であれば、子どもの側に立って判断し、虐待と捉えることとなります。
しかしながら、多くのケースでは保護者が子育てに苦労されている現実があるため、その気持ちを大事に考えることも大切です。
おわりに
子どもが虐待で命を落とす事件があとを断ちません。
子ども虐待の防止は、児童相談所や市町村などの公的機関だけ行えるものではないと考えます。
ぜひ、子育て世代の皆さまは相談できる相手を一人でも作っていただけたらと思います。
本記事が多くの方の目に留ることを祈っています。